或る孤独な青年の体験記としての合法ハーブ 上

一仕事終えたデリヘル嬢を乗せた黒塗りのセダンが目の前の道路を走り過ぎ、盛りのついた2匹の猫が互いに求愛の鳴き声をあげるをの、ベランダに設置されていたエアコンの室外機に腰掛け眺めていた。
窓を開け、寝室に戻る。ついさっきまであった愛おしくもインスタントな温もりの気配はとうに消え失せていて、TVの明かりだけが唯一真っ暗な部屋で虚しく点滅している。

小さな溜息の後、数日前に後輩から譲り受けたばかりの合法ハーブのパケを取り出した。決して酷い依存に陥っているわけではない。知り合いにはいつもそう嘯いていた。
けれどそれが嘘になりつつあることにも、最近気づき始めていた。
(身体的な離脱症状を自覚したことがないというのは確かだが。)

ハーブを一掴みお気に入りの吸引パイプに落とし、ライターでゆっくりと底を熱する。忽ち特有の甘い香りが部屋中に立ち込める。

静かにパイプを咥える。チタンの冷んやりとした温度が、滑らかな刺激となって口辺に伝わる。すぐさま甘美な煙を肺臓へと溜め込むと、それは生理機能によってさらに血液へと取り込まれる。