2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

星の王子様

先ほどから何度も執拗に確認していた時計が、ようやくこの退屈で長ったらしい懲役期間の終わりを告げる。店長からの一言で、私は正式に釈放される。タイムカードを素早く切り、制服から普段着へと着替えた私の心模様は、この後の予定とは裏腹に仄暗いものだ…

ほんの少しの短文でちょっとだけ顧みてみる

ここまで数作書き終えてみて自己認識として分かった事は、第一に基本的にな文章力の欠如、そして救いようのない凄惨たる展開に対する拘泥だろうか。(この2点は克服すべき汚点であり、その為の路線をこれから押し進めてゆくのだ…!)基本的に私の書き物の登…

潮騒

生温かい風が吹き、磯の香りとタバコの煙が鼻腔へと吸い込まれてゆく。澄み切った空、鴎の鳴き声。防波堤の向こうには、陽光に照らされ金色に光る水面が広がっている僕の心持ちを皮肉るように、景色のすべてはこれ以上ない程清々しかった。 コンクリートで舗…

続き物 その2

「うーん……」私の思案を遮るように、男が興奮気味に続ける。 「すごい気持ちいいからさ!それに、ほら、いつだかいってたじゃん。『自分の体をなるだけ汚したいんだ』って」 少し前に犯した失態を蒸し返し、私を詰る。 男のあまりの軽薄さに、何故だか笑みが…

続き物 その1

阪神電車、大阪難波駅、スターバックスコーヒーを横切り、24番出口の階段を駆け上がる。 だんだんと構内のけたたましい音が遠くなり、18時の陽光が斜め上から網膜へと、容赦無く照射される。 光と音に少しだけ疎ましさを感じながら、携帯を取り出す。待ち合…

処女作

これで何度目だ、また僕は真っさらな原稿を置きっ放しにしてしまう。 小説を書こうと思っても、書き出しすら思いつくことができない。 そもそも、どうしても書きたい主題がないのだ。 僕は、これ以上不毛な時間を過ごすまいと、書斎を後にしリビングで一喫す…