おしらせ。

http://blog.livedoor.jp/ruinon770/こちらのブログで、日々小説の感想を綴ることにしました。よろしくお願いします。

お知らせ

誰に知らせるのかわからんけど……http://slib.net/a/9383/とりあえず星空文庫ってサイトのアカウントをとったので、これからは主にそこでお話を掲載していきます。多分……今まで書いてた「頬杖日誌」はそのサイトにタイトルを替えて手直しから、ちゃんと完結さ…

頬杖日誌

彼は思いのほか読書に没頭しているらしく、松葉杖の音にも、勿論それよりも曖昧な私の「気配」にも全く気づいていない御様子。さびしいな。少しだけ、驚かしてやろうかな。いいや、やっぱり止めておこう。私がこうした悪戯を試みたときはいつだって失敗しち…

頬杖日誌

「○○さん。ご家族の方が面会にこられてますよ」看護婦さんにお爺が呼ばれる。お爺が頬を少しばかり憂色を帯びた薄紅色に染めながら、「それじゃあな。続きはまたあとで話してあげよう」とおっしゃったので、「ええ、楽しみにしてますわ」と、持ちうる表情の…

頬杖日誌

今朝の朝食は、プレーンオムレツと二枚の薄いハム、主菜はバターロールが二つで、付け合わせは蜜柑とレーズンの入った白菜サラダだった。病院食は薄味で美味しくないという人が多いらしいが、実際は質素で優しい味付けなだけで、いつもお家で食べている朝食…

頬杖日誌

ふっ、と目を覚ます。本当に「ふっ、と」と形容するのが相応しいような、自然で、清涼とした目覚めだった。いつもの、所謂「朝の忙しさ」というやつに否応無しに起こされるわけではなくて、また、変な夢を見て、そいつから引き剥がされるようにして起こされ…

ためしがき

燦燦とした陽光を網戸越しに覗きながら、ぷかぷかとタバコを吸って居る。十四時の空は雲一つなく、澄み切っていて、青々としていて、とても爽やかだ。その清涼さを感じる度、どうにも胸がきゅうっと締め付けられるような思いがして、死にたくて仕様がなくな…

夏希

ベランダの柵に身を乗り出し、夏を眺めていた。背の高いビルをてらてらと照らす炎のような夕焼け。生暖かい風に揺れる緑黄の木々の葉。道を行き交う浴衣姿の人たち。茹だるような三十五度に汗を垂らしながら、それらの光景を眺めていた。夏は私が生まれた季…

艶笑滑稽譚

正直、大して期待などもしていなかったのですが、Kが呼び出した三人の女の子たちは、三人ともかなりの上玉でした。うち二人は明るい金髪と煌びやかなアクセサリーのよく似合う、とても派手な風貌でしたが、もう一人はというと、全く対象的。さらさらとした黒…

艶笑滑稽譚

私は、バーなどという小洒落た店で飲むのはこれが初めてでした。そもそも、普段から酒など殆ど嗜んでいないのですから。いつもなら仕事を終えたあとは真っ直ぐ家へ帰り、風呂に入り、飯を食べて、それからすぐに就寝してしまうわけです。とっても高そうな酒…

艶笑滑稽譚

私は生まれてこの方二十三年、僭越ながらも、他の誰よりも生真面目に人生を歩んできました。犯罪の類は無論のこと、背徳に対しては人一倍敏感でしたし、これも僭越ではありますが、勤務態度も、きっと、同期の中で一番評価されてるであろうと自負します。と…

或る孤独な青年の体験記としての合法ハーブ 下

鬱屈で散々たる生活に俺が望んでいたのは、こういった安易で直感的な快楽だけだった。全身に、それも爪の先まででろんとした薄い皮膜が貼ったような感触を覚る。局部麻酔を少し優しくしたような、心地よい痺れだ。そして問答無用に脳髄が覚醒する。いつもの…

或る孤独な青年の体験記としての合法ハーブ 上

一仕事終えたデリヘル嬢を乗せた黒塗りのセダンが目の前の道路を走り過ぎ、盛りのついた2匹の猫が互いに求愛の鳴き声をあげるをの、ベランダに設置されていたエアコンの室外機に腰掛け眺めていた。窓を開け、寝室に戻る。ついさっきまであった愛おしくもイン…

星の王子様

先ほどから何度も執拗に確認していた時計が、ようやくこの退屈で長ったらしい懲役期間の終わりを告げる。店長からの一言で、私は正式に釈放される。タイムカードを素早く切り、制服から普段着へと着替えた私の心模様は、この後の予定とは裏腹に仄暗いものだ…

ほんの少しの短文でちょっとだけ顧みてみる

ここまで数作書き終えてみて自己認識として分かった事は、第一に基本的にな文章力の欠如、そして救いようのない凄惨たる展開に対する拘泥だろうか。(この2点は克服すべき汚点であり、その為の路線をこれから押し進めてゆくのだ…!)基本的に私の書き物の登…

潮騒

生温かい風が吹き、磯の香りとタバコの煙が鼻腔へと吸い込まれてゆく。澄み切った空、鴎の鳴き声。防波堤の向こうには、陽光に照らされ金色に光る水面が広がっている僕の心持ちを皮肉るように、景色のすべてはこれ以上ない程清々しかった。 コンクリートで舗…

続き物 その2

「うーん……」私の思案を遮るように、男が興奮気味に続ける。 「すごい気持ちいいからさ!それに、ほら、いつだかいってたじゃん。『自分の体をなるだけ汚したいんだ』って」 少し前に犯した失態を蒸し返し、私を詰る。 男のあまりの軽薄さに、何故だか笑みが…

続き物 その1

阪神電車、大阪難波駅、スターバックスコーヒーを横切り、24番出口の階段を駆け上がる。 だんだんと構内のけたたましい音が遠くなり、18時の陽光が斜め上から網膜へと、容赦無く照射される。 光と音に少しだけ疎ましさを感じながら、携帯を取り出す。待ち合…

処女作

これで何度目だ、また僕は真っさらな原稿を置きっ放しにしてしまう。 小説を書こうと思っても、書き出しすら思いつくことができない。 そもそも、どうしても書きたい主題がないのだ。 僕は、これ以上不毛な時間を過ごすまいと、書斎を後にしリビングで一喫す…