艶笑滑稽譚

私は生まれてこの方二十三年、僭越ながらも、他の誰よりも生真面目に人生を歩んできました。犯罪の類は無論のこと、背徳に対しては人一倍敏感でしたし、これも僭越ではありますが、勤務態度も、きっと、同期の中で一番評価されてるであろうと自負します。
とにかく、「誠実」のみを信条として生きてきました。

しかし最近、真面目だけでは生きていく上でなんの取り柄にもならない事に気づき始めました。上司の中にも、勤務態度を評価しつつも、「融通が利かない」などと私を批判する者もいます。「朴念仁」ともいうそうじゃないですか。
二十三歳にもなってようやく気づいたのです。いやはや、何とも恥ずかしい話です。

このままではいけない!私は、今まで拠り所としていたこの性格を、いっそ矯正してやろうと思い立ちました。つまり、ここで一つ、火遊びを覚えてやろうという事です。
その為には手慣れた人に手伝ってもらうのが一番早いでしょう。蛇の道はへび、といっては失礼でしょうが、私の職場には、おあつらえ向きの同僚が何人もいました。

そのうちの特に遊び慣れている一人に、(ここではKと仮称しましょう。)恥を偲んで、意を決して、頼んでみます。
Kは少し驚いたようなそぶりでしたが、すぐにけろりとして「別にいいよ。面白そうじゃんそれ!」と、乗り気で言い放ちました。

それからの話は早いもので、すぐに、「キマジメクン改造計画」(Kが面白がってつけた名前です)が始動しました。

「まずはとりあえず一杯飲もう」と、計画にしてはなんとも見切り発車なKの提案で、私達二人は職場のそばにあるダーツバーへやって来ました。